【開催報告】ノベルジャムマラソン in 阿賀北 2025

　ノベルジャム新潟チームによる「ノベルジャムマラソン in 阿賀北 2025」のレポートです。

開催概要

　「ノベルジャムマラソン in 阿賀北 2025」は、新潟県阿賀北地域（新発田市、村上市、聖籠町など）を舞台とした創作イベントとして開催されました。

　本イベントは、著者、編集者、デザイナーがチームを組み、本を制作する「ノベルジャム」形式を採用しています。

　当イベントでは従来より長い制作期間を設けるスタイルをとってきましたが、今回は過去最長となる約半年間の期間を設定し、「マラソン」形式として実施されました。

主催

HON.jp（ノベルジャム新潟チーム）

協賛

株式会社菊水酒造、新発田建設株式会社、株式会社長崎屋、社会福祉法人 いじみの福祉会、小池塾、有限会社エス・オー・ディー、Marucho（順不同）

制作体制

　著者4名、編集者2名、デザイナー1名が参加し、3作品が制作されました。

開催経過

　イベントは以下の日程で、阿賀北地域および県央地域の各施設と連携して進行しました。

開会式

　4月19日に聖籠町立図書館で行われました。

初稿発表会

　8月3日に大倉喜八郎ゆかりの建造物である蔵春閣（新発田市）にて、朗読と演奏を交えた発表が行われました。

完成稿発表会

　10月13日に新潟とは別に東京・札幌・沖縄で開催されていた「NovelJam 2025」と遠隔で合流・連携し、エコール国際ネットワーク（三条市）で開催されました。

贈賞式

　11月16日に新発田市生涯学習センターで、「NovelJam 2025」の各会場（東京・札幌・沖縄）と回線を結び、広域的な連携のもと開催されました。

完成作品の概要

　本イベントで制作された3作品の概要は以下の通りです。なお、各作品には協賛企業が作中のモチーフとして登場しています。

『恋愛交差点』

著者：酒井奥次郎

『恋愛交差点　振り向く……立ち止まる』　（著）酒井奥次郎　（編）丸山善三　（表紙デザイン）ソな！

内容

　芸能事務所の副社長とタレント、小説家などが登場する群像劇。神田川の桜並木やドライブの情景を背景に、複数の男女の関係性を描いています。

講評要約

　バブル期を思わせる設定や、協賛企業を盛り込む構成が評価されました。一方で、登場人物全員が結婚を選択する結末については、現代における多様性の観点から議論の余地があるとの指摘もありました。

『涼風』

著者：梅田順子

『涼風』　（著）梅田純子　（編）ヤマダマコト　（表紙デザイン）ソな！

内容

　不登校気味の高校生が、亡き父のカメラを使って9種類の鳥を撮影するという課題を通じ、行動範囲を広げていく物語です。

講評要約

　文章の読みやすさと完成度の高さ、阿賀北の風景描写が評価されました。物語の展開については、設定が初期に提示されるため予定調和的であるという指摘や、主人公の心理描写に関する意見も挙がりました。

『結ノ食堂　あやかし達のご馳走日和』

著者：カナエ

『結ノ食堂　あやかし達のご馳走日和』　（著）カナエ　（編）丸山善三　（表紙デザイン）ソな！

内容

　村上市塩谷地区にある、蔵を改装した食堂が舞台。祖父の店を継いだ主人公が、狐や狸といった「あやかし」たちと共に店を営むファンタジー作品です。

講評要約

　人間と異類の共存というテーマ性や、地域の食材を用いた料理の描写が評価されました。文章表現に課題は残るものの、物語としての魅力が評価され、新潟賞（グランプリ）に選出されました。

審査結果

　審査員（仲俣暁生氏、西村純子氏）による選考の結果、以下の作品が受賞しました。

新潟賞（グランプリ）

『結ノ食堂　あやかし達のご馳走日和』（著者：カナエ）

選定理由

　湊町・塩谷の風情や料理の描写を通じ、主人公が居場所を見つけていく過程が描かれている点、および地域とファンタジーの設定が説得力を持って提示されている点が評価されました。

総括と今後について

　ディレクターの萬歳淳一は、今回の半年間に及ぶ開催形式について、新潟の県民性に適した形式であり、より長編の作品制作が可能になったとしています。また、県央地域からの参加者やHON.jpとの連携により、広域的な展開が行われました。

　完成した作品は、電子書籍サービスBCCKSにて電子版・紙版が販売されているほか、聖籠町立図書館にて閲覧が可能となっています。

【参照】

ノベルジャムマラソン IN 阿賀北2025 作品一覧（BCCKS）
https://bccks.jp/store/noveljam-marathon-in-agakita2025
聖籠町立図書館
https://www.lib-seiro.jp/